1998年12月第2土曜日。京都半日バス観光に出かけた。
線路わきのコンクリに無数の直角をつくる雨を見ながら、
久しぶりに大阪駅からJR京都線新快速に乗り込んだ。
京都駅まで30分間、目をかっぴろげて外を見た。
天気が良すぎると30分も目をかっぴろげられないので、
雨で良かった。
女の子の寝顔を盗み見したり、サントリー山崎蒸留所あたりの山が
雨でけむっていたりするのも旅行気分で楽しい。
出来たばかりの京都駅ビルは
わたしの知る京都駅でなくなっていた。
このターミナル建築には賛否両論があったし新聞で酷評を読んだが、
古都と対極なこんな駅でもいいと思った。
117段大階段は風が吹き抜け寒かったが、
カフェにはひざ掛けがあった。
昼間はぎらぎらしているが、
夜になるとこの建物は自分を主張しない。
メリークリスマスの文字もツリーも控えめで、
ライトアップされた京都タワーを壁面に映し出していい感じだった。
金閣寺は、雨にいぶされ重厚な輝きを放ち、
銀閣寺は、濃淡もみじが地面一面にしっとりはりつき、
賀茂川の柳にカラスが“ぽってり”とまっているのも何ともいえない。
ピンクの傘で路地をゆく若者の後姿まで絵葉書にしてしまう。
京都は小憎たらしい。
清水寺で、長雨を耐え抜きしだれている、
熟れた紅葉のすきまから差し込む夕陽を見た時
やっぱり雨で良かった、と確信した。
京都三大名所めぐりの帰途、赤く電飾された十字架があった。
バスが左折すると、
遠景にライトアップの京都タワーがそびえていた。
赤い十字架と京都タワーが車窓から消えるまで見続けた。
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