父は大人になってから鳥取を出て、父親と義理の母が住む、
都島区の鐘紡の社宅に住んだ。
お見合いで大阪の女性との結婚が決まっていたが、
故郷の叔母から、倉吉にいい人がいるから会ってみたらと勧められ、
義理立てもあり、帰省し会った。
それが母だった。
同郷の人と一緒になりかたかったのとちゃうか、
母は言うが、違う。
父は、母の美しさと純朴さに心を鷲づかみにされたのだ。
倉吉の喫茶店で、
「菜っ葉の炊いたのが好きです。」
「私も大好きです!」
母は両手を胸の前に合わせ嬉しそうに笑ったに違いない。
父もまた、美しい人だった。
婚約を破棄させた事は、真面目で律儀だった父の生涯一度の反旗だったと思う。
父の両親は、大阪のお相手に菓子折りと金一封を持ち頭を下げに行った。
コーヒーの音がしててなぁ、、、
懐かしそうに母が言う。
ポコポコポコポコ・・・・・
昭和30年前半の喫茶店で、
24歳と21歳の父と母が向かい合って座っている。
その風景をいつでも思い浮かべる事が出来る。
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