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YOKO

教頭先生




小学校の教頭先生はアコーディオンだった。


林間学校で高野山に行く南海電車でアコーディオンを弾く教頭先生が

アルバムに写っている。

中肉中背でスーツ、黒々とした髪が整髪料でテカって、黒縁めがね。

穏やかな表情と声だった。


教頭先生が抱えているアコーディオンを見るといつも、

“腹身の焼きサバ”が頭に浮かんだ。


何を歌って弾いてはったのか全く思い出せなかったが、脈絡なく、

「きつね、たぬき」が脳の奥底から浮かんだ。

きつね、たぬき?・・・あ、

こぶた、たぬき、きつね、ねこ・・・・

「こぶた、こぶた、たぬき、たぬき、きつね、きつね、ねーこ、ねーこ」


教頭先生はこの繰り返しの音階を上げ下げし、

子どもにリフレインさせて歌っていた。


4年生位の時、自習時間に当然先生はアコーディオンで教室に来られた。


そして、クラスで1番ちからの強い子と弱い子を選ばせた。

弱い子は友達の小さくて細い、すみよちゃん。

「あたし心臓に穴あいてるねん」と言っていた。体育は出なかった。

強い子は西山君。ジャイアン。


先生は1番開けやすい窓をすみよちゃんに、開けにくい窓をジャイアンに開けさせた。

すみよちゃんはすーっと開けながらニコッと笑った。

ジャイアンは、キーっとした顔でやっとこさ開けた。


後のことは覚えていないので、数年に1回思い出すたび、

教訓はなんやったんやろう、と考えていた。


後期中年になり出した結論は、

「人を見かけで判断してはいけません」


違うだろうか。

かしこい人、だれか教えてください。





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