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老木、桜。

  • YOKO
  • 2023年4月12日
  • 読了時間: 1分

更新日:2023年4月19日




人の住まない平屋の庭角に、桜の老木がある。


根元は雑草が乱雑に巻き付いているが、

丸太の切り株になる太さだ。


その老木は4m程に切られ、

大きいイボコブがいくつもへばりついている。

何本かの太い枝も短くされ、

まことに“奇妙で不気味で不格好”


水木しげるにかかると妖怪にされ、

山の頂にそれだけあると、誰も近づかないだろう。


醜い老木に、鑑賞するほどもない桜が咲いていた。


若葉の頃はアスファルトに影を落とし、

春になると行く人は美しさに足を止め、

むせるような桜吹雪を散らしたであろう、老木。


『生きとるぞ。ワシはこんなんなっても生きとるぞ!!』


12年前に他界した、父の声と姿に重なった。


日没後、自転車のハンドルに緑色の駐輪禁止の紙をつけ、

左手に大きなビニール袋をさげた、

60代くらいのオジサンが老木の下で止まった。

オジサンはしばらく眺め入り、スマホを縦に横に写真を撮り、

また眺め、去っていった。


小学校横の遊歩道には、

踏まないで歩けるくらいの花びらがもう落ちている。


あと1週間、入学式までに葉桜にならないとええな・・・


茜色が濃くなっていく西の空を見ながら

犬の散歩を続けた。


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