平成2年。26歳。Z労災の派遣社員になった。
既に3人派遣されていて親しくなり、
翌年結婚するお祝いにペアのワイングラスをプレゼントしてくれた。
午前のお茶タイムに私達4人で社員さんに、
給湯室に貼ってある紙を見ながら用意する慣例があった。
なんでウチらだけがしてんの?おかしくない?
3人に疑問符はなかったので派遣元に報告した。
後日私たちは事務所の応接セットに呼ばれ、
課長から丁寧な謝罪を受けた。その後女子社員も含め当番制になった。
80年代のロングヘア、眉毛濃くメイクばっちり。
男顔風の女子社員がいた。
課の忘年会で焼き肉屋に行きお手洗いから戻ったその子の唇は、
薄いシャイニングピンクだった。
ほろ酔いの顔色に、赤い紅から薄い紅にお直しする女子力に感服した。
青いベストにひざ丈スカートの昭和制服だった。
ロングヘアの20代の時エレベーターに乗っていると
真後ろのおばさんが「この髪の毛がなぁ」と言った。
私はティモテのCMのような事はしていない。
降り際に振り返り、
「混んでるから仕方ないですよねえっ!!」わりと声高に捨てセリフした。
工事中の道路に差し掛かった運転中、
坂上のコーンに下りてくる原付がいたので迷わずアクセルを踏んだ。
上がった所で原付ヤンキー男に正面から行く手を阻まれた。
先に上がったのが気に食わないらしい。
女だからなめているのだ。
窓を15センチ開け、火花ちらしイチャモン付けあった。
チャイルドシートの娘は寝てしまった。
帰宅後思い出した。坂道は上り優先。
この一発でギャフンだったのにと今でも悔やまれる。
最善は窓を開けず、
119番に通行妨害受けていますと電話する事だった。
それに気が付いたのは最近の事で、
頭の巡りの余りにもの悪さに情けなさをおぼえる。
コロナ禍のパスタ屋。
顎マスクで調理しているのがどうしても気になる。
「お客さんに感染徹底させといて見える厨房で顎マスク調理はあなたおかしいと思いませんか?」
ウエイトレスにこんこんと言い聞かせた。
神妙に聞き納得していた。
一年経ち行くと顎マスクだった。呆れた。
30代で旅行会社勤務の時、先輩男子に“鉄の女”と言われた。
論破するほどの頭脳は持ち合わせない。
自分の左脳は石ころが一個入っているだけだと思っている。
ホームで割り込まれても黙っている。
一日の事を思い出し夜ベッドでウジウジする。
自戒後悔で寝つきが悪いのは茶飯事なのに、
今でもどうも腑に落ちない。
幼稚園の時「2月生まれだからねー」
と先生に事務室に連れていかれ、サイン色紙に墨でお誕生会用の手形をとられた。
「わたしさんがつ」言えなかった。
夕方のブランコの音で胸が痛くなる繊細さを保持したまま、
あと6年も経てば高齢者になる。
思うに、鉄と、溶かす1500度の熱を内包している人間。
になったという事か。
面倒くさい女だ。
独りなわけだ。
娘が保育園の時一回りサバ読み、
「お母さんは28歳で妖怪やから死なへんねんで」
と宣言していた。
お母さんはただの“面倒くさい女”でした。
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