再婚のきざしの全く無い娘に業を煮やした両親に“結婚相談所”に連れていかれた。
十三駅近くのクリーニング屋のオッちゃんが兼業でやっていた。
パソコンは無く、相手探しにはオッちゃん手作りのファイルを見に行かなければならない。平成九年だったが全くアナログ。
ある方からお声が掛かり、会うために相談所に足を運んだ。
中肉中背でスーツの人。好きも嫌いもない。年齢は釣り合っている。
父親は会社経営者で次男。
初めて男性に対して打算を考えた。高齢出産にリミットだった。
お金に不自由なさそうだし。
もう働くのしんどい。
優雅な専業主婦、、、
次男というのも良い。
子供が出来たらきっと可愛いのだろう、、、
そのうちこの人にも情がわいてくるかもしれない、、、
ライトアップで大川沿いの“夜桜” が満喫出来る
大阪観光水上バス「アクアライナー春季限定コースお花見弁当付き」
春の嵐になりそうな空の夜、初デートでその方と天満橋から乗船した。
その方は先に乗り込み、サッサと窓際に座られた。
―え?普通窓際に座らせるやろアタシなんもみえんやろ―
お花見弁当を食べながらその方を見ると、唇から錦糸卵がぶら下がっていた。
―生理的にムリ―
風が強くなり足元が不安定な下船をするときもサッサと先に歩かれた。
―なんやこの人。そら彼女でけんわ―
私の曇天気分はどん底スレスレ状態だった。
「梅田に戻ってご飯でもたべましょうか?」錦糸卵が言った。
『あかんすぎる吐いてまう』
「すみません、わたし実は出かける時から少し熱があって、、、
でも約束の日でしたので来たのですが、、
すごくしんどくなってきたので今日は帰らしてもらっていいですか?
本当にすみません、、、」
女は咄嗟の嘘がうまい。
風邪ですか?大丈夫ですか?と仮病に心配をしてくれる人ではあった。
タクシーで梅田まで送ってくれた良い人ではあった。
梅田駅の切符売り場で猛烈な虚しさが心の底から沸きあがった。
元カレに電話してしまった。呼出音は鳴り続け虚しさは増すだけだった。
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