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物理の先生

  • YOKO
  • 2023年5月27日
  • 読了時間: 1分


高校生の時、雨の通学路を悲しい気持ちで歩いていた。

ぬーっと後ろから大きい黒い傘に入れてくれたのは、

物理の先生だった。


先生、失恋したことある?

・・・想いが届かなかったことはある。


ふうん。


「僕はモーニングに行くので」と言って道路を渡っていった。


阪大からの非常勤教師の物理先生は、

ヒョロヒョロ背が高くて手が長く

頭が小さく、

タコっぽかった。


教室に入るなり「僕はいがんでるのが嫌いなんだあー」

だらんとなっているプリントの画びょうを直したり、

食堂のテラス席で雨の日、

軒があるのにトレイを左手で頭にかざして食べてたり。


フランクフルトの薄皮を

無理矢理むいて食べていた。

「先生カワむかんでも食べれるねんで」

一回は教えた。


物理も化学も大嫌いだった。

授業が始まる前から学校指定のダサい黒皮鞄に

体操服を折りたたみ乗せ、枕を作った。

化学の“1モル”という言葉だけ

先生の物真似をしたので覚えている。


3年生最後の物理の答案用紙は半分白紙残り適当。

右下に「先生単位下さい」と書いた。


戻った用紙には紙が破れそうな筆圧の赤ペンで、

『甘い!』

と書かれた。


こんな先生はいつまでも心に残る。




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